これから作る三つの的
これからこのゲームを事例に、一緒にゲームを創っていきます。見本ゲーム「三つの的」です。下にあるのは6章まで進めた完成形。そのまま遊べます。まず1回遊んで、目的地を体で知ってから読み進めてください。
なぜ要るか
企画は書き終わりました。でも自分では穴が見えません。
壁打ちとは、自分の考えを誰かへ投げて、返ってきたものを受けて考え直すことです。テニスの壁打ちと同じで、相手に勝つのが目的ではありません。相手役をAIにやらせます。
自分の企画は、頭の中で補完しながら読んでしまいます。書いていない部分も「まあ分かるだろう」で通過します。その通過した場所が、あとで手戻りになります。
ここでAIに読ませます。AIは補完しません。書いていないことは、書いていないと言ってきます。 しかも文句を言わず、何度でも読み直してくれます。
これは人に見せるより先にやるべき作業です。指摘は早いほど安いからです。紙の上なら書き直しは1分、コードを書いた後なら数時間です。
使う道具: Claude Code
AIプロンプト
この術の作業をAIへ任せるときは、これをそのまま貼ってください。
1) docs/plan.md を読んで、この企画の弱いところを3つだけ指摘して。ファイルは変更しないで、指摘だけ返して。初心者が最初の1本を完成させられるかという観点で。
2) docs/plan.md を読んで、これで作り始められるか。足りない情報があれば教えて。
- は、指摘を読んで企画を直したあとに使ってください。
やってみる
企画を読ませて、弱いところだけ聞く
コツは3つあります。指摘の数を決める、観点を渡す、ファイルを変更させない。最後のひとつが特に大事です。何も言わないとAIは気を利かせて企画メモを書き換えてしまい、自分がどう直したのか分からなくなります。
cd my-first-game claude -p "docs/plan.md を読んで、この企画の弱いところを3つだけ指摘して。ファイルは変更しないで、指摘だけ返して。初心者が最初の1本を完成させられるかという観点で。"数を決めないと10個返ってきて心が折れます。3つがちょうどいい量です。
返ってきた指摘を読む
実際に返ってきたものを、そのまま載せます。文中の「先手」は先に操作する人、「後手」はあとに操作する人という意味です。
## 1. 「同時に出す」が1台のパソコンでは実装できない 面白さの1行は「どの的を捨てて、どの的を取るか」ですが、交代で操作すると 後手は先手がどの的に置いたかを見てから選べます。捨てる判断の 読み合いが消えて、後手が必ず有利なゲームになります。 ## 2. 合計が同じ的を、どちらが取るのか決まっていない 「合計が大きい方がその的を取る」としか書かれていません。 同じ合計になった的は誰が取るのか、そもそも誰も札を 置かなかった的はどうなるのかが未定義です。 ## 3. 引き分けで終わったときの表示が決まっていない 的は3つですが、2の指摘のとおり誰のものでもない的が出ると、 取った的が1対1のような決着が普通に起こります。 「勝敗の表示」しか項目がなく、引き分けの扱いが未定義です。最後にこう付いてきました。
いちばん先に決めるべきは 1 です。2 と 3 は決めるだけなら数分で済みます。1つ目は致命的でした。 「同時に出す」と書いたのに、1台のパソコンで交代して遊ぶ設計だったので、後の人が必ず有利になります。読み合いという面白さの芯が、そもそも成立していませんでした。読み合いとは、相手が何を出すか分からないまま、お互いに予想して手を決めることです。相手の手が見えてしまうと、予想する必要がなくなります。
これはコードを書いてから気づいたら、作り直しです。
直す。全部でなくてよい
指摘を全部飲む必要はありません。自分の企画なので、選びます。 今回はこう直しました。
指摘 どう直したか 同時に出せない 相手をコンピュータに変えた。人対人は次回に回す 同点の的が未定義 合計が同じ的と、誰も置かなかった的は、どちらのものでもないと決めた 引き分け未定義 取った的の数が同じなら「ひきわけ」と表示して終わると決めた 面白いのは指摘2への対応です。「どちらのものでもない」と決めた瞬間、わざと同点に追いついて、相手の的を潰すという手が生まれました。穴を埋めただけなのに、遊び方が1つ増えています。指摘に答えているうちに、企画が良くなりました。
ちなみにこの「同点はどちらのものでもない」は、いまのルールではありません。6-6で実測したら引き分けが多すぎたので、「あとに置いた方が取る」へ変えています。 企画の1行は、後から測って直せます。
直した理由も一緒に残す
何を直したかだけでなく、なぜ直したかを書きます。あとで「なんでこうしたんだっけ」に答えられます。
## AIの指摘で直したこと(2026-07-29) - 1台で「同時に出す」は成立しないと指摘された。相手をコンピュータに変えた - 同点の的の扱いが未定義と指摘された。どちらのものでもない、と決めた - 引き分けの表示が未定義と指摘された。ひきわけと出して終わると決めた保存して送り返す
git add . git commit -m "AIの指摘を反映して企画を直した" git pushどう変わったか見る
GitHubでコミットを開くと、企画がどう変わったか一目で分かります。赤が消した行、緑が足した行です。
企画が1回更新されました。 これでこの術は達成です。
実例: 僕も同じ指摘を受けています
今回AIが出した「相手をコンピュータにしなさい」という指摘。これは僕自身が通った道です。
このカードゲームも、CPU戦を先に作って、対人戦を後から足しました。 理由は前の術で書いたとおりで、対人戦から作ると相手を用意しないと1回も試せないからです。
つまりAIの指摘は、正しかったわけです。経験者が同じ結論に至る場所を、企画段階で先に教えてくれたということになります。
もう1つ、このアプリで大事にしているのがフィードバックの受け口です。画面の左側に「フィードバック」とDiscordへのリンクが常に出ています。
AIの壁打ちは早くて安いですが、人の反応には代えられません。 順番はこうです。
- AIに壁打ちさせる(今この術)→ 穴を潰す
- 作って出す → 人に遊んでもらう
- 感想を受ける口を用意しておく → 次を作る
AIで潰せるのは「書いていない」「成立していない」という穴です。「面白いかどうか」は人に遊んでもらうまで分かりません。だからAIで済ませようとせず、早く出して人に触ってもらうところまで持っていきます。
もう1つの使い方
指摘させるだけでなく、遊んでもらうこともできます。
claude -p "docs/plan.md のルールで、僕と1試合やってみて。置き先は「一の的」のように言うよ。"
AIが対戦相手になり、こちらの手を待ってくれます。画面はなく、文字のやり取りだけで1試合できます。紙で遊ぶより速く、ルールの穴が出ます。「そのルールだと決着がつきません」と言われたら、その場で直せます。
つまずきどころ
指摘が厳しくて心が折れた
数を絞ってください。「3つだけ」と言うのが大事です。それでもきつければ「よくできている点も1つ挙げて」と足すと、読める分量になります。
指摘が的外れに感じる
無視して構いません。 決めるのはあなたです。ただし「なぜ無視したか」を1行だけ書いておくと、あとで自分を助けます。
AIが勝手にファイルを直した
指示に「ファイルは変更しないで」を入れてください。それでも触られたら git diff で確認し、git checkout . で戻せます。1-4でやったとおりです。
指摘どおりに直したら企画が別物になった
それは指摘の飲み方が多すぎます。面白さの1行に効かない指摘は捨ててください。 芯だけは守ります。
Windows の場合
claude -p の使い方は同じです。コマンド内の引用符は半角にしてください。
Codex で進める場合
同じことができます。
codex exec "docs/plan.md を読んで、弱いところを3つだけ指摘して。ファイルは変更しないで。"
こういう「読んで指摘するだけ」の作業は、コスパに優れる Codex 向きです。僕も企画の壁打ちは Codex に振ることが多いです。
次の一歩
直した企画を、もう1回読ませてみてください。
claude -p "docs/plan.md を読んで、これで作り始められるか。足りない情報があれば教えて。"
「作り始められます」と返ってきたら、企画は完成です。次の章から、いよいよ動くものを作ります!
