これから作る三つの的
これからこのゲームを事例に、一緒にゲームを創っていきます。見本ゲーム「三つの的」です。下にあるのは6章まで進めた完成形。そのまま遊べます。まず1回遊んで、目的地を体で知ってから読み進めてください。
なぜ要るか
世界観というと「飾り」だと思われがちです。キャラを可愛くして、背景を綺麗にして、雰囲気を出すもの。違います。世界観は判断基準です。
2-2で「面白さの1行」を決めました。あれはルールの判断基準でした。世界観はその見た目と言葉の判断基準です。決まっていると、色も、キャラも、ボタンの文言も、迷わず決まります。決まっていないと、1個ずつセンスで悩むことになります。
そしてここが大事なのですが、絵を描く技術も、配色の知識も、AIが持っています。 人間の仕事は「何と何を、どういう意味で結ぶか」を決めることです。それが決まっていれば、AIへの指示は驚くほど短くなります。
使う道具: なし(紙とAIへの壁打ち)
AIプロンプト
この術の作業をAIへ任せるときは、これをそのまま貼ってください。
このゲームの世界観の核は「◯◯」です。
次の部品に、核に沿った言葉と意味を提案してください。
こじつけに見えるものは「無理」と正直に言ってください。
◯◯ は自分で決めた核の一語に置き換えて、続けて書き出した部品を貼ってください。
世界観は「意味の二重写し」で作ります
やり方の芯は1つです。見た目の要素に、機能の意味を重ねる。
実例を見せます。この講座のサイトそのものです。
トップにいるこの2人、可愛いから置いたのではありません。全部に意味が割り当ててあります。下の表は、左に画面で見えるもの、右にそこへ重ねた意味を並べたものです。この記事ではこれを意味表と呼びます。
| 見た目の要素 | 重ねた意味 |
|---|---|
| ベースの藍色 | 藍=AI。「青は藍より出でて藍より青し」=教わった人が教えた者を超える |
| 咲耶の提灯 | 道を照らす=案内役。この講座の役割そのもの |
| 絵馬 | 願いを言葉にすると叶う=プロンプト |
| 巻物 | 巻き戻せる記録=Git |
| 相棒のタルトの新芽 | 若葉→蕾→満開=読んだ術の進み具合 |
「藍色だから夜の絵にする」は飾りの発想です。「藍=AIだから藍色にする」が意味の発想です。 見た目が同じでも、後者は迷ったときに立ち返る場所になります。
見本ゲームの「三つの的」にも同じ意味表があります。たとえば「一の的・二の的・三の的」は門の的・蔵の的・井の的へ、「手札」は呼べる者へ言い換えました。口寄せというのは、忍者や陰陽師の話に出てくる「離れた場所から助け手を呼び出す術」のことです。里の守り所は全部守れない、自分は動かず呼んで任せる——どちらも和風の名前を付けたのではなく、ゲームの芯の1行に意味を合わせただけです。 表の残りと絵の入れ方は5-5で作ります。 ここでは表を二重に持たず、作り方だけ持ち帰ってください。
作る手順は4つです
核の一語を決める
世界観全体を貫く言葉を1つだけ選びます。あとで迷ったときに「これは核に合っているか」と当てるための物差しになるので、1語か短い言葉にします。このサイトなら「忍の里」。あなたのゲームが宇宙船の話なら「航海」かもしれません。
既にあるものを並べる
機能、画面、ボタン、進捗、記録。ゲームに既にある部品を書き出します。世界観はここに被せるものであって、部品を増やす口実ではありません。
部品と意味を結ぶ
部品1つに、核の一語の世界から言葉を1つ当てます。「セーブ」→「巻物に記す」。「進捗」→「新芽が育つ」。結び方は、実在の文化や元ネタの公式設定から取ってください。 自分で全部発明すると、こじつけ臭くなります。藍とAIのような偶然の一致を見つけたときが一番強いです。
結べない部品は、飾らない
意味を思いつかない部品は、無理に世界観語にしないでください。普通の言葉のままが正解です。
実際にやった失敗を1つ
この講座の章名は最初、「構え」「宿す」のような世界観語で考えていました。却下されました。分かりにくいからです。
いまの章名は「環境設定」「企画の立て方」——普通の言葉です。案内板は分かりやすさが仕事であって、世界観の見せ場ではありません。世界観は絵と小物と進捗の演出に置いて、道案内には置かない。これが手順4の「結べない部品は飾らない」の実例です。
意味が決まると、AIへの指示が短くなります
このサイトの絵は全部AIに描かせていますが、キャラごとの指示は実質これだけです。
夜の里、深い藍色、背景の情報量は少なく、
キャラを提灯の暖色で浮き立たせる
世界観の意味表が決まっているから、この数行で絵が揃います。 逆に意味表が無いと、毎回「もっと可愛く」「もっとそれっぽく」と曖昧な修正を繰り返すことになります。細かい描き方はAIの領分、何をどんな意味で置くかが人間の領分です。
キャラクターも世界観から生まれます
もう1つ、順番の話をします。キャラ作りより、世界観が先です。
4章で、このゲームの対戦相手のキャラ「こより」を作ります。そのとき、キャラの設定はゼロから考えていません。世界観の意味表から引いています。
| 世界観にあったもの | こよりの設定になったもの |
|---|---|
| 口寄せ(呼んで、任せる) | 里の口寄せ番の少女。相手が強い理由もこれで付く |
| 紙の小道具(切紙・巻物) | 名前は紙縒りから。紙のお守りの髪飾り、手に巻物 |
| 藍の夜 | 藍色の髪、白×藍の装束 |
| 栞=道を示す紙 | 相棒は折り鶴の式神「しおり」。案内役の隣を飛ぶ |
式神は、術で動かす使い魔のようなものです。ここでは折り鶴が動いてお供をしている、という設定になっています。
最初に世界観を作っておくと、キャラクターメイキングも楽にできるので、おすすめです。 「どんな見た目にしよう」と白紙から悩む代わりに、表から引くだけで決まります。しかも、そうやって作ったキャラは、画面の他の部品と勝手に揃います。 同じ表から出てきているからです。
やってみる
核の一語を決める
あなたのゲームを一言で言うと何の世界ですか。10分で決めて、企画メモに足してください。
## 世界観の核 忍の里部品を5個書き出して、意味を結ぶ
企画メモに、下のような3列の表を作ります。左に既にある部品の名前、真ん中に世界観の言葉での呼び方、右にそう呼ぶ理由を書きます。
部品 世界観での言葉 意味 セーブ 巻物に記す 巻き戻せる記録 5個のうち2個結べれば十分です。残りは普通の言葉のままにします。
AIに壁打ちさせる
このゲームの世界観の核は「◯◯」です。 次の部品に、核に沿った言葉と意味を提案してください。 こじつけに見えるものは「無理」と正直に言ってください。「無理」と言わせる一文が要点です。 AIは頼むと何にでも意味を付けてくれるので、止まる基準を渡します。
保存する
git add . git commit -m "世界観の核と意味表を決めた"
つまずきどころ
こじつけに見える
自分で発明した意味は大体こじつけです。元ネタの公式設定、実在の文化、言葉の由来から取ってください。それでも無ければ、その部品は飾らないのが正解です。
意味を付けすぎて疲れる
全部品に意味は要りません。トップ画面に見えるもの2〜3個で十分です。数より、1個の意味の深さが効きます。
世界観語にしたら分かりにくいと言われた
案内板(メニュー、章名、ボタン)は普通の言葉に戻してください。この講座も同じ失敗をして戻しました。
絵が世界観と揃わない
意味表をそのままAIに渡していますか。「可愛く」ではなく「藍の夜、提灯の暖色」のように、意味表の言葉で指示してください。
Windows の場合
差はありません。
次の一歩
核の一語を決めて、部品を1個だけ意味で結んでください。
その1個が、以降のすべての見た目の判断基準になります。


