第7章 AIへの任せ方/5 本目 / 全 6/約30分

AI社員に持ち場を渡す

こより

担当は役割じゃなく、触るフォルダで分けるよ。進捗の置き場をひとつにまとめておくと迷わないね。

案内役 こより
この術でできるようになること

担当が決まって回る

なぜ要るか

前の術で、1つの仕事を任せられるようになりました。ここから先で詰まるのはです。

作るものが増えると、頼む相手は1人のままでは回りません。ゲーム、記事、投稿、集計、経理。全部を同じ相手に頼むと、毎回全部の前提を説明することになります。

だから持ち場を分けます。 担当ごとに、見る場所と守る決まりを固定します。

これを僕は「AI社員」と呼んでいます。呼び方は何でもよくて、大事なのは分け方です。

使う道具: なし(テキストファイルと記録)

AIプロンプト

この術の作業をAIへ任せるときは、これをそのまま貼ってください。

1)(ここへ担当の決まりを貼る)
6-3 の履歴の丸を、勝敗だけでなく出した札も見えるようにして。

2) 今日やったこと、次にやること、詰まったことを progress.md へ3行で追記して。

担当の決まりは「やってみる」の2で書いた5行を貼り、作業の内容は自分の依頼に置き換えてください。

分け方は「見る場所」で決めます

役割で分けたくなりますが、それだけだと曖昧になります。 実際に効くのは、触るフォルダで分けることです。

僕の分け方はこうなっています。

事務・統括の担当(5人)
  統括            全体の状態を見て、次を決める
  マーケティング   数字を見て、次の一手を決める
  記事作成        原稿を書く
  記事投稿        媒体へ出す
  日誌            その日の記録を残す

開発の担当(7人)
  リポジトリ1つに対して1人。触る場所が重ならない

リポジトリというのは、1つの作品のファイルをまとめて置いている場所のことです。1-4でGitを入れたあのフォルダが、そのままリポジトリです。

開発の担当は、リポジトリと1対1です。 これが要点です。

担当A → /path/to/game-a       この中だけを触る
担当B → /path/to/game-b       この中だけを触る

こうすると、7-4で書いた「同時に走らせると壊れる」が起きません。持ち場が物理的に分かれているからです。

担当ごとに書くのは3つだけ

1人ぶんの定義は短く済みます。僕は1ファイルに3つだけ書いています。

name                 担当の名前
description          何をする担当か
developer_instructions  守る決まりと、始業時にやること

長い経歴書は要りません。「何をして、何をしないか」だけです。

そして呼び出しは1行にしておきます。

<AIのコマンド> -C <その担当が触るフォルダ> "<担当の決まり>\n\n<今日の依頼>"

-C は「このフォルダを作業場所にして始めて」という指定です。担当の決まりと今日の依頼を、続けて1つの文として渡しています。

フォルダを渡すのが効きます。 これだけで「他の持ち場を触らない」がほぼ守られます。

進捗の正を1箇所に置きます

ここが一番大事です。担当を増やすと、状態がバラバラになります。

やってはいけないのは、担当ごとにメモを持たせることです。

駄目な形 起きること
担当ごとにメモファイル 全体が見えない。同じ話が2箇所に書かれる
チャットの履歴だけ 探せない。前回どこまでやったか分からない

だから進捗はデータベース1つに集めます。 僕はSQLiteのファイル1つを正にしています。SQLiteは、ファイル1つで動く小さなデータベースです。6-4で出てきたサーバーのDBと違い、サーバーを立てずにそのまま使えます。

いまの中身を数えるとこうです。

記録(notes)      197件
進捗(entries)    133件
決定(decisions)    9件
学び(learnings)   10件
詰まり(blockers)   2件

担当ごとの記録数はこうなっています。

simple-puppet             47
tdmodeler                 41
skill-cli                 37
マーケティング            18
game-ninlabo              17
aireporter                15
cnp-tradingcard-online     9
その他                    13

偏っていて構いません。 むしろ偏りが、いまどこに力を入れているかを表しています。

見る画面は「生成物」にします

状態を人が読む形にも出します。ただし手で書きません。

<!-- 生成物。手書き禁止。正はデータベース。 -->

### 統括
- status: waiting_review
- summary: 日次の改善ループを設計・実装
- next: ダッシュボードの送信失敗の原因特定

生成物というのは、元のデータから機械が作り出したファイルのことです。だから手で書き換えても、次に作り直した瞬間に消えます。1行目のコメントは、未来の自分に対する注意書きです。

各担当について3つだけ出します。

項目 中身
status いまの状態(作業中、レビュー待ち、詰まり)
summary 直近で何をしたか
next 次にやること

next があるのが要点です。 これが埋まっていれば、次に呼んだとき説明が要りません。空なら、その担当は止まっています。

そしてこの画面は必ず生成物にします。 手書きすると、データベースと画面で違うことが書かれる日が来ます。6-1から繰り返している「正は1つ」です。

学びを溜める場所を作ります

これが効くまでに時間がかかりますが、効き始めると大きいです。指摘されたことを、担当の記憶ではなく記録に残します。

僕の記録にはこういうものが入っています。

・記事の結びは「!」で終える。中間の文まで無理に!にはしない
・書く前に狙い(動かす数字・仮説・根拠・成功条件・中止条件)を宣言する
・基準値は実データから都度取る。過去の会話に出てきた数字を再利用しない
・バナーは装飾の指定を省かない。「情報量は抑える」と書いて自分で装飾を禁止しない

全部、一度失敗して指摘された内容です。

大事なのは形です。「何を」だけでなく「なぜ」を書きます。 理由が無い決まりは、状況が変わったときに守るべきか判断できません。

そして溜めた学びは、次に呼ぶとき読ませます。 読ませないなら溜める意味がありません。

統括を1人置きます

担当が5人を超えたあたりから、誰に頼むかを決めるのが仕事になります。

そこで統括を置きます。やることは2つだけです。

統括の仕事 中身
状態を見る 全担当の statusnext を読む
割り振る 次にやることを、担当へ渡す

統括は自分で作業しません。 ここを守らないと、統括が全部やり始めて、担当が空になります。僕はこれを一度やりました。

やってみる

  1. 持ち場を2つに分ける

    最初は2人で十分です。触るフォルダが違うものを選んでください。フォルダが違えば、同時に頼んでも書き込みがぶつかりません。7-4で書いた並列の事故を、分け方だけで避けられます。

    担当1 → ゲームのフォルダ
    担当2 → 記事や告知のフォルダ
    
  2. 1人ぶんの決まりを5行で書く

    name: game-dev
    description: 三つの的の開発を担当する
    instructions:
      - 触るのは my-first-game の中だけ
      - 変更前に commit する
      - npm test が通らない状態で終わらない
      - 迷ったら進めずに質問して止まる
    

    4行目を必ず入れてください。 7-4と同じ理由です。

  3. 進捗の置き場を1つ決める

    最初はファイル1つで構いません。担当ごとに分けないことだけ守ってください。

    progress.md    全担当の記録をここに追記する
    

    データベースにするのは、探しづらくなってからで間に合います。

  4. 呼ぶときにフォルダと決まりを渡す

    <AIのコマンド> -C ./my-first-game "<担当1の決まり>
    
    6-3 の履歴の丸を、勝敗だけでなく出した札も見えるようにして。"
    
  5. 終わったら記録を追記させる

    今日やったこと、次にやること、詰まったことを progress.md へ3行で追記して。
    

    「次にやること」を必ず書かせてください。 ここが次回の入り口になります。

  6. 保存する

    git add .
    git commit -m "担当を2つに分けて、進捗の置き場を決めた"
    git push
    

つまずきどころ

担当を増やしたのに、結局全部自分で説明している

決まりが担当のファイルに書かれていません。毎回説明している内容が、そのまま決まりです。 書き写してください。

同じ話が2箇所に書かれている

進捗の置き場が分かれています。1つに寄せてください。担当ごとのメモは作らないのが原則です。

前回どこまでやったか分からない

next を書かせていません。終了時に必ず書かせてください。

統括が全部やってしまう

「統括は自分で手を動かさない」を決まりに書いてください。書いていないと、できる相手はやってしまいます。

担当が多すぎて管理が仕事になった

分けすぎです。触るフォルダが同じなら、同じ担当にまとめてください。役割の名前で分けるのは後です。

担当が学ばない

学びを記録していて、それを読ませていないパターンです。呼ぶときに読ませる形になっているかを確認してください。

Windows の場合

フォルダの渡し方が変わるだけで、考え方は同じです。パスの区切りに注意してください。

次の一歩

いま自分がやっている作業を、2つの持ち場に分けてください。

紙に書くだけで構いません。「これはどちらの持ち場か」を迷う作業が出てきたら、そこが境界の設計ミスです。 その1件が、分け方を教えてくれます。

持ち場が分かれて回るようになりました。次は、使うAIそのものを目的で使い分けて、費用を想定内に収めます!

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