これから作る三つの的
これからこのゲームを事例に、一緒にゲームを創っていきます。見本ゲーム「三つの的」です。下にあるのは6章まで進めた完成形。そのまま遊べます。まず1回遊んで、目的地を体で知ってから読み進めてください。
なぜ要るか
前の術で、画面に何があるかは決まりました。でもこれだけでは足りません。
そのゲームは、何が面白いのか。 ここを言葉にしていないと、作っている途中で必ず迷います。「この機能を足すべきか」を判断する基準が無いからです。
面白さを1行にしておくと、判断が一瞬で終わります。その1行に効くなら足す。効かないなら足さない。 これだけで、余計なものを作る時間がまるごと消えます。
AIに任せるようになると、機能は驚くほど簡単に増えます。だからこそ、増やさない基準を先に持つ必要があります。
AIプロンプト
この術の作業をAIへ任せるときは、これをそのまま貼ってください。
面白さの1行:(ここへ自分の1行を貼る)
これに「プレイヤーの行動」と「得られる手応え」の両方が入っているか検査してください。
感想の言葉が混ざっていたら指摘だけして、代わりの1行は書かないでください。
(ここへ自分の1行を貼る)の部分は、自分で書いた1行に置き換えてください。
1行の書き方
型は1つだけ覚えれば足ります。
(プレイヤーが)〜して、〜する。
前半がする行動、後半が得られる手応えです。行動は「遊ぶ人が指で何をするか」、手応えは「その結果として何が起きて嬉しいか」です。両方入っていることが大事です。
例を並べます。
| 弱い1行 | 直した1行 |
|---|---|
| 面白いカードゲーム | どの的を捨てて、どの的を取るかを決める |
| 気持ちいいパズル | 積み上げた塊を、1手でまとめて消す |
| 忙しいゲーム | 増え続ける注文を、ぎりぎり間に合わせる |
左は感想です。右は行動と手応えが入っています。右なら判断に使えます。
実例: 1行が形に出ているか
僕のカードゲームで確かめてみます。
このゲームの面白さは「拠点3つのゲージを、どう割るか」です。拠点は取り合う場所、ゲージはその拠点に残っている体力の目盛りです。相手の拠点を殴ってゲージを削り切れば勝ちます。
1行にするとこうなります。
どの拠点を狙うか選んで、相手のゲージを先に割り切る。
これが決まっていると、カードの能力にもそのまま出てきます。実際に入っているカードの効果を見てください。
| カード名 | 効果 |
|---|---|
| オロチ | 【ゲージブレイク】2枚減らす |
| フウジン | 【登場時】コスト5以下の制圧中の相手のユニット全てをユニットエリアに移動させる |
このゲーム独自の言葉が並んでいるので、意味は分からなくて構いません。見てほしいのは1行目です。
「ゲージブレイク」という言葉が、そのまま能力名になっています。 面白さの芯が決まっているから、カードを作るときも「これはゲージを割る話に効くか」で判断できます。
逆に、面白さが決まっていないままカードを増やすと、強いだけで意味のないカードが混ざります。100枚作ってから気づくと、直すのは地獄です。
だから1行を先に決めます。
この講座の見本ゲーム「三つの的」も同じです。1行は「どの的を捨てて、どの的を取るか」。しかもこれは後から決め直したものです。最初の見本は面白さの1行を決めずに作った「数くらべ」で、つまらないと言われて、この1行から作り直しました(6-7でその一部始終を書きます)。
使い方が本番です
書いた1行は、飾りではありません。判断の道具です。
たとえば「どの的を捨てて、どの的を取るか」と決めたなら、こう決まります。
- 出した札が的の前に残って見える工夫 → 入れる(捨てる判断の材料になるから)
- カードの種類を20枚に増やす → 入れない(1枚の重みが薄れて、捨てる痛みが消える)
- 派手な勝利演出 → 後回し(1行には効かないが、気持ちよさには効く)
やっていることは、思いついた案を1つずつ1行に当ててみて、効くかどうかだけ見る作業です。この判断がその場でできるようになります。迷った時間がゼロになります。
やってみる
docs/plan.mdの上の方に1行を足す前の術で作った企画メモを開いて、「何を作るか」のすぐ下に書き足します。ファイルを開くたびに目に入る位置に置くのが大事です。
## 面白さの1行 どの的を捨てて、どの的を取るかを決める。行動と手応えが入っているか読み返す
「〜して」の部分がプレイヤーの操作になっていますか。「楽しい」「気持ちいい」だけで終わっていたら、まだ感想です。
自分では判定しにくければ、検査だけAIに頼めます。
面白さの1行:(ここへ自分の1行を貼る) これに「プレイヤーの行動」と「得られる手応え」の両方が入っているか検査してください。 感想の言葉が混ざっていたら指摘だけして、代わりの1行は書かないでください。「代わりは書かないで」が要点です。 この1行だけは、人の言葉を借りると判断の基準になりません。
保存する
cd my-first-game git add . git commit -m "面白さの1行を決めた" git push
これで docs/plan.md はこうなります。
# 企画メモ
## 何を作るか
1画面で遊べる、2人用のカードゲーム。
## 面白さの1行
どの的を捨てて、どの的を取るかを決める。
## 1画面に何があるか
...
つまずきどころ
面白さが思いつかない
自分が好きなゲームの1行を書いてみてください。「敵の攻撃を見て、後出しで避ける」のように書けます。他人のゲームで練習すると、自分のゲームでも書けるようになります。
1行に収まらない
面白さが2つあるなら、片方を捨ててください。 最初の1本で2つ両立させるのは難しいです。捨てた方は次の作品に回せます。
あとで変わりそうで決められない
変わって構いません。この1行は書き換える前提です。大事なのは「今の基準がある」ことです。基準が無いと、変わったことにも気づけません。
Windows の場合
この術は編集と git だけなので、macOS と同じです。
次の一歩
決めた1行を、誰かに声に出して言ってみてください。
言った瞬間に「それ、どうやって遊ぶの?」と聞かれたら合格です。 相手が遊び方を知りたくなった証拠です。次の術で、その遊び方=ルールを書き出します!