こんにちは、健ちゃんです。
結論から言うと、AIで作って割を食っているのは、失うものがある人だけなんです。
ゲーム業界では今、契約書からAIが締め出されはじめています。数字も出ていて、生成AIの利用を開示したゲームは、初月のレビューが半分近くまで落ちます。これを聞くと、AIでゲームを作ろうとしていた手が止まりますよね。僕も最初はそう思いました。
ところが調べていくと、損の当たり方が偏っていることが分かったんです。つまり、世間のAIへの批判を鵜呑みにするのは危険だということです。今日はその話をします。
契約書から、AIが締め出されはじめました
ゲーム業界の弁護士、Haley MacLeanさんの話が2026年8月に出ました。Voyer Lawでビデオゲーム分野を率いている方で、GamesRadar+のインタビューに答えています。
内容はかなり強いものでした。クライアントのほぼ全員が、生成AIを使わないという条項を契約へ入れるようになったというんです。以前は一部の慎重なパブリッシャーだけの話でしたが、いまは「大手がやっているなら、うちも」という流れになっているそうです。
彼女がスタジオへ出している助言は、こうです。
触るな。割に合う法的責任ではない
理由は2つ挙げられていました。1つはプレイヤーからの反発、もう1つは著作権のリスクです。アメリカの著作権法は人間が作ることを前提にしているため、生成AIは著作権を譲渡することも移転することもできない、と説明されていました。
開示すると、初月のレビューが52.6%減ります
その反発は、数字にも出ています。
ゲーム市場を分析しているGame Oracleの、Ross Burtonさんによる調査です。2025年12月17日に公開されました。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 対象 | Steamで2025年1〜10月に出た商用ゲーム 9,879本(無料プレイを除外、スパム疑い1,932本を除外) |
| AI開示の割合 | 17.9% |
| 中心の数字 | 同条件のゲームと比べ、初月レビューが52.6%減(95%区間 47.69〜57.63%) |
| レビュー数の中央値 | AIなし7件 / AIあり4件 |
| 好評率 | AIなし88.3% / AIあり84.6%(レビュー100件以上のゲーム) |
同じジャンル、同じパブリッシャーの有無、同じ開発経験、同じ発売月で揃えたうえでの比較です。AIなしのゲームが100件のレビューを集めるとき、AIありは47件しか集まらない、という話なんですね。
1つだけ注意があります。この調査が測っているのはレビュー数であって、売上そのものではありません。売上の代わりにレビュー数を使った推計だと、Burtonさん自身が明記しています。
ところが、損をしているのは大手だけでした
ここからが本題です。
同じ調査の中に、見落とされやすい一行があります。開発者の経験で分けると、結果がまったく違うんです。
- 経験の浅い開発者では、AIを使ったことによる悪影響はほとんど見られない
- 実績のあるスタジオでは、売上が40〜60%落ちる
Burtonさんはこれを「AI Stigma(AIの烙印)」と呼んでいます。つまりこの烙印は、もともと成功できたはずの人を選んで狙い撃ちにしているわけです。
損をしないのは、もともと売れていないからです
では、なぜ無名の個人は影響を受けないのか。
調査の説明は、身も蓋もないものでした。経験が浅くて良いゲームを作る技量がまだ無いので、AIを使わなくてもどのみち売れなかっただろう、というものです。実際その層は、AIの有無にかかわらず売上が22〜39%低い水準にあります。
Burtonさんの結論の一文が、いちばん正直です。
すでに経験が浅く、マーケティングもしていない開発者なら、AIを使っても追い打ちにはならない。ただし、救いにもならない
ここで一度、立ち止まりました。「AIを使ってよいのか」を悩んでいたのに、そもそも悩む土俵に上がっていなかった、という話なので。
同じ時期に、作る側が潰れています
もう1つ、逆風が吹いています。
帝国データバンクが2026年8月8日に出した調査です。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 倒産件数 | スマホゲーム事業者、2026年1〜7月で10件 |
| 前年との比較 | 2025年の年間3件を、7か月ですでに大きく上回った |
| 見通し | このペースなら、年間では過去最多だった2015年の12件を超える |
| 規模 | 過去5年の倒産29件のうち、資本金1000万円未満が15件(51.7%) |
理由として挙げられていたのは、初期開発費が数億円規模へ膨らんだこと、そしてリリース後の更新やイベント運営で維持費が積み上がることでした。サービス終了が突然告知される例も増えているそうです。
面白いのは、サービス終了そのものは増えていないことです。4Gamerが毎年末に集計している数字を見ると、こうなっていました。
| 年 | サービス終了タイトル数 | 平均運営期間 |
|---|---|---|
| 2024年 | 166本 | 約1,368日(約3.7年) |
| 2025年 | 148本 | 約1,311日(約3.6年) |
数え方は4Gamerが紹介したタイトルに限られるので、業界全体の数ではありません。それでも傾向は読めます。終了するタイトルの数は横ばいなのに、運営会社のほうが倒れている。 そして運営期間は、わずかですが短くなっています。
この調査に、AIは原因として出てきません。 あくまで費用の話なんですね。
二つの逆風は、向きが違います
整理します。
- AIへの反発は、失うものがある人に当たる
- 費用の高騰は、体力のない会社に当たる
そして、この2つをつなぐ一行を、Burtonさん自身が書き添えていました。AIは原因ではなく、症状かもしれない。 コスト削減を迫られ、工期を詰めた結果としてAIが選ばれているのではないか、という見方です。
そう読むと、話がつながります。業界が苦しいからAIへ手を伸ばし、手を伸ばしたことで損をしている。ただしAIによる費用削減も効くので、差し引きでプラスかマイナスかまでは分かりません。そして個人は、この連鎖の外側にいるんです。数億円を回収する必要がないので。
イケハヤさんが代表を務めるフルAIアニメスタジオ「Studio VIBE」も、この動きと一致します。イチから立ち上げたスタジオなので、守るべき過去がなく、逆風をまったく受けません。それよりも、AIでアニメやゲームを素早くリリースするほうがプラスだと判断しているわけです。
日本で作るなら、権利の考え方も見ておきましょう
MacLeanさんの話はアメリカの著作権法が前提です。日本には、文化庁がまとめた考え方がありますので、それを参考にするのがよさそうです。文化審議会著作権分科会の法制度小委員会が、2024年3月15日にとりまとめたものです。
そこにはこう書かれています。
- AI生成物に著作権が認められるかは、個別の事例ごとに判断される
- 判断の要素は、プロンプトなどの指示・入力の分量と内容、生成の試行回数、複数の生成物からの選択
- 人間が加筆・修正を加えた創作的表現の部分には、通常、著作物性が認められる
僕は法律の専門家ではないので、ここは「調べたらこう書いてありました」という紹介にとどめます。ただ、少なくとも日本の考え方では、「AIに出させて終わり」と「AIに出させてから作り込む」が別物として扱われる、ということですね。
僕は、作る側にい続けたい
Steamでは、2025年11月の時点で10,258本のゲームが生成AIの利用を開示しています。ライブラリ全体の約8%です。これは自己申告なので、調べた本人も「実際の利用の下限」だと書いていました。
つまり、締め出しの動きと並行して、使う側も増え続けているわけです。
僕が題材にしているCryptoNinja(クリプトニンジャ)とCNPは、二次創作も商用利用も開かれているIPです。だから権利の心配をする必要がなく、作ったものを堂々と出せます。AIで作ることに後ろめたさを感じるなら、素材の出どころから選び直すのが早いですよ。
9月5日には、京都で「AIでゲーム制作Bar」もやります。遊びながら作り方を学ぶ、丸一日の会です。詳しくはこちらをご覧ください。
個人の課題は、AIではなくマーケティングです
ここまで見てきて、僕の結論はこうなりました。
個人や零細チームにとっての課題は、「AIを使ってよいか」ではなく「どうやって見つけてもらうか」です。
AIを使うかどうかは、個人のレベルでは勝負を分けません。AIの負の影響を受けるのは、失うファンを持っている人だけでした。だったらAIを使う前提で、見つけてもらう努力に時間を割いたほうがいい。要はマーケティングなんですね。
これはゲームに限った話ではありません。作れる人が増えた分野は、すべて同じ形になります。
そして、AIを使えばゲームは誰でも作れます。まずは1つ、作ってみましょう。
今日できる、小さな一歩
最後に、今日のうちにできることを1つだけ。
あなたが好きなキャラクターの絵を1枚、動かしてみてください。
ゲームを1本作ろうとすると腰が重いですが、キャラが1体動くだけで、作れる実感はかなり変わります。僕はここから始めました。
その手順は「2Dキャラモーション作成スキル」としてまとめてあり、一忍メルマガ(健ちゃんのメルマガ)へ登録いただいた方へお渡ししています。1枚の絵を分解して、動くキャラとしてアプリへ組み込むまでの道順です。
見つけてもらう努力は、作ったものがないと始まりません。まず1体、動かすところからいきましょう!
出典
- 帝国データバンク「スマホゲーム事業者の倒産動向(2026年1-7月)」 2026年8月8日
- Game Oracle, Ross Burton「AI in Games: The Impact On Sales」 2025年12月17日
- GamesRadar+(Haley MacLeanさんへのインタビュー) 2026年8月
- Totally Human Media「Games With AI Disclosures Have Grossed an Estimated $660M on Steam」 2025年11月6日
- 4Gamer「さようなら2025年。サービス終了を告げたタイトルにもお別れを」 2025年12月31日
- 4Gamer「さようなら2024年。サービス終了を告げたタイトルにもお別れを」 2024年12月31日
- 文化庁「AIと著作権について」



